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会員紹介

有限会社伊東農園
(写真提供:(有)伊東農園)
 (有)伊東農園(以下、伊東農園)は、スギやカラマツなどの苗木を生産する会社です。良質な苗を作って安定供給するシステムを確立し、全国各地の行政や業者に手広く販売しています。2代目社長である伊東毅さんは、新たに社内に環境緑化部を立ち上げ、山林や立ち木の買い取り、伐採、造林、保育といった再造林に関わる事業を始めました。林業発展のための取り組みが高く評価され、伊東農園は、平成30年度第53回秋田県林業経営コンクール「林業経営の部」優秀賞(秋田県知事賞)、令和元年全国林業経営推奨行事「林野庁長官賞」を受賞しています。

今回は、伊東農園の取り組みの内容や、事業を通して伝えたいことについてうかがいました。

(有)伊東農園 代表取締役 伊東 毅さん
―協議会の中で、どのような役割を担っていますか?

伊東さん 再造林推進部会の部会長をしています。最近、国有林の再造林はけっこう進んできているけれど、民間の山は伐ったあとそのまま荒れ放題なのが気になって、そういう山を買い取って、苗を植えて育てるということを始めたから、声がかかったんだと思います。山をやり始めたばかりで忙しかったから、部会長は断ったんですけど…会議に行ったら決まってました(笑)。

―林業成長産業化モデル事業がスタートして3年経ちましたが、これまでの活動について教えてください。

伊東さん これまでは大館市がリーダーシップを取って、市有林の伐採と再造林を進めて来ました。東京の豊洲に木材を納品するなど、循環の輪が一回りしたと思います。事業の折り返し地点を過ぎたので、これからは北秋田市や上小阿仁村も積極的に動いていく必要があるんじゃないかと思います。
(伊東農園所有の森林。写真提供:(有)伊東農園)
―再造林に関する伊東農園の取り組みについて教えてください。

伊東さん 昔は、山に木を植えればひと財産になると言って、皆、競って植えたものです。今は、山が収益を生まないから誰も手を出さない。安い株と一緒ですよね。誰かが先陣を切って山に苗を植えないといけない…そう思ったから、後継者がいなかったり、相続したけれど持て余したりしているような山を買い取って、苗木を植えています。

また、ここ数年、クマの被害が増えていますよね。クマが里に下りてくるのは、山に食べ物がないからです。奥山に実のなる木を植えて、クマが山に帰るようにすればいいと考えて、クリやミズナラを植えました。適地適木と言って、スギにこだわらず、標高や条件に合わせていろいろな種類の木を植えていく必要があると思います。
(苗木の仮植風景。写真提供:(有)伊東農園)
―今後、モデル事業を進めていくにあたって、どんなことが必要だと思いますか?

伊東さん 本当に再造林を進めるなら、苗木を担保して植える条例を作って、伐採後の計画を伐採届に記載するのを義務化するといった、行政の縛りが必要じゃないかと思いますよ。

再造林は、苗を植えて終わりではありません。下刈りといって苗の周りの雑草を刈って日当たりを確保したり、生育の悪い苗木を除伐したりする「保育」の作業が大事なんです。実は、再造林にかかる経費の約3割が、保育の経費です。補助金を保育費に使えるといいと思います。

また、秋田県の再造林率は2割以下なのですが、大分県は6割なんです。なぜ大分の再造林が進んでいるのか…その取り組み内容について、秋田県の方に調べていただくようお願いをしているところなので、そういった先進地の事例から学ぶことも大事です。

―最後に、再造林について伊東さんの思いを聞かせてください。

伊東さん 山に魅力を取り戻したいですね。これまで、秋田はスギがメインでしたが、カラマツや広葉樹は材として価値が高いです。だから、標高に適応する苗木、材として資産価値のある苗木をどんどん植えて、しっかり育てて、周囲の人に「山の価値は上げられる」と気づいてもらうきっかけになったら、嬉しいですね。

―ありがとうございました!

この記事を書いたライター 島田 真紀子(mamaplan所属)https://mamaplanodate.net/
有限会社無明舎出版勤務を経て、フリーライターとして雑誌やWEBの記事を執筆。
秋田県内を中心に、観光・食・子育て・スポーツ・話題のスポットなどについて発信しています。

―取材を終えて
今は全国に取引先があって活躍されている伊東農園ですが、林業が下火になった頃に会社を継いでからの苦労は相当なものだったそうです。「良質なものを提供すること」「安定供給をすること」で信頼を得て、業績を伸ばしてきた伊東さん。林業全体にとっても、その2つはとても大事なことで、また、課題でもあるのだなと感じました。
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